地獄から這い上がった男
信じられない話かもしれませんが、私は大学を卒業して以来、約25年に渡り、年間4000時間働いていました。並みのサラリーマンの勤務時間が、一般的には年間2000時間程度ですから、如何に過酷な労働をしていたかお解かりでしょう。そんなに仕事できるはずは無い、と言う方もいるでしょうが、年間休日40日位で、1日平均13時間超、朝8時~夜10時過ぎまで勤務して、休憩はほとんど取れない職場なら、4000時間は不可能な数字ではありません。特に、30歳で独立し会社を立ち上げてから15年は、心身ともに疲れ果てるまで仕事しました。後に、過労死した人の勤務形態を目にする機会がありましたが、私よりはるかに楽な勤務であったことに驚きました。もっとも、妻をはじめ、家族の理解と協力があったので、死なずに済んだと思います。
40代の半ばのある日、意地でも立っていられない程体調が悪化しました。色々な病院で、様々な検査や治療を行いましたが、残念ながら回復しませんでした。過労とストレスのため体に変調をきたしたのです。このままでは命が危ない。私も医療関係に従事していましたので、自分の体がどの程度蝕まれているかは、容易に想像できました。
会社の業績は良好でした。この不景気の中、毎年かなりの利益を出していました。私の周辺は、世間の基準に見合わないほどのバブルに沸きました。しかし、この先々は解らない。しかも尋常ではないほど疲れきっている、もう少し儲けてからなんて、助平心は捨てました。私は無職になり、治療に専念できる環境は整いましたが、世間とは隔絶された世界に放り出されました。
なかなか体調は回復の兆しが見えませんでした。また、世間でよく言われることに、定年を迎えると1ヶ月で電話もかかって来なくなる、と言うことを聞いたことがありましたが、まさにその通りでした。初めて寂しさを感じました。主治医からは絶対安静を言い渡され、私は文字通り引きこもりになりました。その間、好きな映画も音楽も読書も一切しなくなり、全てのことに全く興味が沸かず、毎日が退屈で暇を持て余す生活になりました。思えば一生のうちで、これほど暇を感じた経験が無く、私は途方に暮れました。
そんな生活を送る日々の中、唯一興味を失わず、また毎週のように楽しみにしていたのが競馬でした。現役で仕事をしていたころは、忙しさに感けて、予想もいい加減なら購入もバラバラ、当然収支はマイナスです。時間の無い最中にも、競馬は怠らなかったため、また競馬歴は二十数年になっていましたので、それなりの知識と経験は持っていました。このような時間に余裕のある生活は初めてでしたが、考えようによっては、思いっきり存分に競馬が出来る良いチャンスだと思いました。むしろ、競馬が無かったら自分はいったい何のために生きて、今何をしているのか想像もつきません。
誰でも通る地獄道
競馬を始めてから数年前までは、ほとんど毎年マイナスの連続。何かがおかしいと感じていました。怪しげなマル秘情報を得るために、色々な競馬情報会社にも入会しましたが、結果はご想像の通りです。騎手買いはもちろん、ギャンブルで必勝法と言われるマーチンゲールの法則や、ころがし、ウエイト等、何でも試してみましたが、惨憺たる結果でした。相馬眼を鍛えるための努力もしました。血統理論も研究しました。調教分析にも相当注力してみました。競馬専門誌も1誌では足りないのかと、2誌も3誌も買い込んで、穴の開くほど検討しました。その結果、ある程度は当たりましたが、最終的な回収率は多くの開催でマイナスでした。大概の人は、この時点で、競馬は儲からないと考え、止めてしまうか、やっても重賞だけとか、趣味の範囲内で収まるようになります。しかし、自分の意思の弱さと、根っからのギャンブル好きが災いして、やめる気は全くありませんでした。
暇になって改めて、自分の馬券作戦は何がいけないのか、よく考えてみました。以前は片手間にやっていた競馬研究に没頭しました。仕事を辞めたせいで、競馬研究には十分な時間がありました。(現在は薬局も経営し、薬剤師として仕事もしています。)怪我の功名というか、転んでもただでは起きない性格も幸いしたのかもしれません。それまでの私は、確固たる理論があるわけでもなく、その時その時の勘で購入していたので、何かとムラがありました。そのことがいけないとは、何となく気づいていました。では、何を頼りにどのファクターを信頼すべきか、一から出直しの気持ちで反省してみました。そう言えば、プラス収支のときは、必ずと言って良いほど穴馬券を当てていた時でした。破壊力満点の万馬券は、的中率は低くそう簡単に当たるものではないとの認識でしたが、当たった時には回収率はプラス収支必至です。
馬券作戦の反省と改良
つまり、的中率にはこだわらず、回収率にこだわって馬券作戦を検討した方が、良い結果が出ると考えました。多くの競馬ファンは、新聞の印や着順の良い話題の人気馬に偏って購入する傾向にあります。穴馬券は、それら多くの人と同じ事をやっていたのでは取れません。一般の人と異なる理論で馬券作戦を展開しなければなりません。そのことの気が付くまで、私は何と20年以上も掛かってしまいました。色々な項目を全て検討し尽くす、という行為そのものが間違いなのです。それは、多くの競馬ファンが求める最大公約数的な買い方ということに気づき、結局は人気サイドを多く買っている、人気の裏づけを探しているだけに過ぎないことが解りました。
私はまずは、パドックや返し馬で馬券作戦を検討するのを止めました。
次に、血統理論を捨てるに至りました。
また、厩舎情報、厩舎コメント等を読むことを止めました。
更に、調教から勝ち馬を想定することも控えました。
騎手を頼りに購入することも止めました。
前走上位入線馬にこだわるのも程々にすべきと考えました。
しまいには、専門誌の印は全く無視するに至りました。
それらのことは、馬券作戦を展開する上で、皆さんが利用する重要なファクターであることは百も承知です。単に的中にこだわるなら、それらのファクターは有用です。しかし、パドックや血統や調教の良い馬、前走着順や持ちタイムが良い馬、トップジョッキーが騎乗している馬等々には、買いが集中し人気は実力以上に上がってしまうことが多々あります。回収率にこだわるなら、むしろ軽視するか無視した方が良いファクターが、かなり含まれていることが、詳しく分析すればするほど解ってきました。今まで散々重要視していたことが、実は回収率を下げる元凶になることも発見しました。まさか、出目やサイン馬券、お名前馬券や誕生日などの記念日馬券は、さすがに買ったことはなかったですけどね。
競馬考
皆さんは、競馬に限らずギャンブルは、絶対に儲からないものと思っている方が多いのではないでしょうか?当たることも勝つこともあるが、長くやっていると必ずマイナスになる、全体では負けている方が大半だと思います。同じ事を繰り返して、明日も昨日と同じ手法で馬券作戦を組み立てている限り、負けは永遠に続きます。
競馬専門誌やスポーツ新聞の馬柱に積み込まれた膨大な情報を分析するだけでも、相当の時間と手間暇がかかり、それなりの鍛錬が必要です。また、本誌の見解ばかりでなく、厩舎コメントや情報、調教、血統、前走近走の着順や着差、持ちタイム、距離及びコーストラック適正、展開、斤量、ローテーション、騎手、厩舎、馬体重、更にはパドックや返し馬、そしてオッズなど、諸々の要素をレース間隔の短い時間内に組み立て、出走各馬との比較を行い、最後に買い目を決定して、競馬場やウインズではマークカードに記入、もしくはパソコンや携帯に入力して投票するのは、なかなか大変です。どの項目をどの程度重視するのが最適か、その比重は毎回なんとなく決めている方や、思いつきで決めている方や、独自のマイルールを持っていない方などは、その場その場でアッチを重視コッチで決めようなんて、ふらついている方が大半です。どの要素をどれだけ重要視すれば、または軽視すれば良いのでしょうか?皆さんのほとんどの方がやっている、競馬新聞を見つめながら、いくつもの要素を検討チェックして、最も勝ちそうな強い馬を見つける、という予想では、当たることはあっても絶対に間違いなく儲かりません。競馬新聞だけで馬券作戦を組み立てるということは、竹槍で戦車に立ち向かうのと変わりありません。それだけは断言出来ます。
繰り返しますが穴馬券は、誰もがやっていることと同じ事をやっていても獲れません。着順や騎手や血統や調教など、各要素が良い馬に新聞は◎を打ち、それを見る多くの競馬ファンは、◎だから勝つはず、強いだろうと思って馬券を買います。従って、過剰に人気は上がりオッズは下がってしまいます。人気馬は確かに上位に来る場合が多いでしょう。買えば的中は増えるが回収は伴わず、結局負け続けることとなるのです。1番人気を買い続けると、回収はいつの年でも75%前後です。ド素人がテキトーに馬券を買っても、同じような回収率です。
馬の能力は、人気とは全く別物だと言うことが理解できるようになりました。人気は人が作るものです。よって、人気は無いが実力のある馬を見つけた時が、最も優れた回収を叩き出す瞬間です。的中率と回収率は全く異次元のものです。的中率を上げるだけでは、儲けることは出来ません。
勝ち競馬の真理
競馬に勝つ、と言うことの定義について考察してみましょう。競馬の儲けとは、「払い戻し額」―「購入額」であり、それが+でない限り、数多くのレースを的中させていたとしても、「勝ち」ではありません。勝つためには、「払い戻し額」を極大化する必要があります。如何に爆発的に回収するか、高配当を的中させるかに掛かってきます。そして、「購入額」を極小化すること。如何に無駄な買い目を省くか、この2点に集約されます。そのためにはまず、軸馬選定を正確に行うこと。穴狙いに徹すること。儲からないレースは見送ること。当たり前のようですが、この考え方が単勝期待値理論の原型です。
他にも、軸馬に穴馬が選定できない時は、相手に不人気馬を選定すること。堅いレースに手を出さなければならない時は、極限まで買い目を絞り込むこと。人気過剰馬は徹底的に嫌うか、もし買うとしても押さえまで、もしくは2着付け3着付けでの購入検討をすること。人気馬同士の組み合わせは、結果として外れることがあっても絶対に買わないこと。レースは厳選して行うこと。重不良の時には悪天候用の買い目を用意すること。適正馬体重から逸脱した馬の評価を下げること。多くの引き出しを持って、柔軟に対応出来る業を身につけると、自然と光明が見えてきます。基本スタイルは徹底した穴狙いですが、なにも、毎回ホームランを狙ってブン回すことばかりが良いこととは限りません。
スピード指数との出会い
様々なファクターを検討する中で、唯一残った、最も当てに出来そうな理論は、スピード指数、タイム理論の考え方です。走破タイムは、馬場状態やコース別距離別に大きく変わるので、正確な馬の能力を現さない、とも言われていました。今では当たり前で論じられている方法ですが、馬場差を考慮して各馬の走破タイムを補正することによって、スピード指数はより信頼度が増します。更には、確率と統計の数学的手法を応用し、過去の結果から未来の結果を類推することができます。
指数系理論だけ基に、一時馬券検討していましたが、実はそれだけでは危険なことも解りました。そこには、人の目によるアナログ的な補正が必要です。VTRを繰り返し見ることにより、また前週のレース全ての状況を記載している週刊誌等を参考にすることにより、指数の変更を随時行います。出遅れた、発馬後挟まれた、道中不利を被った、コーナーロスを強いられた、前をカットされた、直線前が壁になった、外にも出せなかった、追い出しが遅れ脚を余した、馬場の悪いところだけを通らされた、枠順の不利が災いした等々。このようなケースで惨敗し、人気を落としているようなら次走は狙えます。指数も低く算定されてしまうかも知れませんが、底上げして再算定が必要です。また、スローペースで1頭だけ猛然と追い込んで届かなかった、外枠からハイペースで逃げたがわずかにかわされた等は、通常のスピード指数より強い場合が多いと考えます。逆に展開に恵まれて上位入線した馬は割り引かなくてはなりません。低いメンバーランクの凡タイムで勝ちあがった馬には、厚い昇級の壁があり、そのレースの上位入線馬も疑ってかかります。また、好メンバーで5着だったが0.2秒の僅差だったなどと言う場合には、多少下駄を履かせます。少頭数とフルゲートでは、1着の価値が異なります。さらにスピード指数の難問、スローペースですが、ホントにスローなのか、実は実力が無かったのかは、詳しく吟味します。他に、開幕週と最終集の馬場コンディションの違い、器用に足を使えるか、揉まれると弱いか、砂をかぶると弱いか、サウスポーか否か、諸々です。最近では、グリーンチャンネルで放映される、「先週の結果分析」などで、詳しく検討紹介されています。私も馬場差の多くをこの番組で出した数値をある程度引用していますし、解説陣のアドバイスはよく参考にさせて頂いています。
兵どもが夢のあと
最終R終了後、戦場を後にするとき、散々散らかった新聞、外れ馬券、マークシート、ごみの山…。資源の無駄など、エコな事を申しているのではありません。うず高くゴミ箱行きとなった、散々赤ペンで書き散らかした競馬新聞の山々に想いを馳せるのです。このまま処分して良いものなのか?つい先ほどまであなたはこの紙面に釘付けになっていたのじゃあないですか?
誰でもそうですが、外れたレースや儲からなかった日の新聞なんて、持ち帰ったってしょうがない、見るだけ気分悪い、来週はまた新しいレースが始まるのだから、邪魔になるだけ、見返すことも無い、そんな暇は無い、結果は翌日のスポーツ紙でも見ればよい。と思っているでしょう。私も以前はほとんど”過ぎたるは及ばざるが如し”とばかりに、帰る道々新聞は無造作に捨ててしまいました。しかし本当にそれで良いのだろうか?疑問はずっと前から持っていました。
勝負の世界に、ギャンブルではありませんが、将棋や囲碁やチェスがあります。将棋は小学校に上がる前からやっていました。想えば、そのころから勝負勘は鍛えられていたのかもしれません。小学3年生くらいで上級生を相手にしても物足りず、有段者を相手にする腕前になっていました。将棋では必ず、対局が終わると感想戦を行います。これをやらない限り絶対に腕は上がりません。勝ち負けに係わらず、検討と反省を繰り返す。そして次局につなげる。そうして腕に磨きがかかり、腕と神経と勘が研ぎ澄まされていきます。競馬にも同じことが言えるのではないでしょうか?
外れたレース、負けた日にこそ、教訓は山ほど隠されています。いや、的中レースや勝った日にも教訓とすべき項目はたくさんあるものです。何故、このレースは外れてしまったのか?どうして今日は負けたのか?回収がプラス収支にならなかったのは何故か?無駄な買い目は無かったか?無理な賭け方はしていなかったか?取りこぼしはなかったか?考え直すことは無限にあるように思われました。そして掛け金や資金分散、購入馬券は適正だったかなど、検討すること、実際にレースをじっくり見なければ解らないこと、その場では瞬時に判断できないことは山ほどあります。だいたい、ライブでは10分おきにレースが行われてしまうので、いちいちそれらを考えて検討するだけの物理的時間の余裕がありません。レースが終わって配当を確認したら、すぐ次走のレースの発走時間が迫ってきてしまいます。馬体重やオッズの最終確認をして、馬券購入の決断をしなければなりません。勢い、終わったレースに関しては、検討は後ほど、ということになります。重賞やメインなら多少はメディアや諸々で少なからず検討されますが、平場やローカルなどは、こちらから能動的に接しない限りほとんど検討されないまま、つまり「やりっぱなし」になってしまいます。これでは成長もなにもない。それこそ、出たとこ勝負の、適当なレースになってしまい、馬券検討ばかりか、ギャンブルよりお粗末な、くじ引きに近いモノに低落してしまいます。これで当てよう、儲けようなんて考えるほうがおこがましいでしょう。儲けるにはそれなりの時間と努力と工夫が必要です。そして、常にリスクと背中合わせで、我慢の連続で、冷や汗と油汗流しながら、胃に穴が開く想いをしながら、歯を食いしばりながら、馬券を買うのです。儲けるとはそういうことです。山勘で儲かるほど競馬は甘くはありません。楽して儲けるなど簡単な世界ではありません。日ごろの汗水垂らして努力して得られる涙の結晶こそが回収率100%の壁をぶち破るのです。感想戦は必要不可欠です。
まず、手身近なところから、グリーンチャンネルで放映さえる「レースリプレイ」「パトロールビデオ」「先週の結果分析」を見ることにしました。その中で、今回の買い目の再検討や勝負レース選択は正しかったかどうかの検討、次走注目馬や危険な人気馬のランク分け、投資金額の管理、道中の不利や制裁の確認、その他諸々を週間競馬誌とにらめっこしながら行いました。その中で、有効と思われる情報は書き出しておいて、忘れないようにパソコンで管理しておきました。世の中には、「レイトバスター」「ターゲット」「ラップギア」などの競馬ソフトが出回っており、かなりの猛威を振るっていることは知っていいました。その中には管理能力のあるソフトもありますので、それも利用することにしました。復習は、日曜日の最終レースが終わってから始めても、火曜日いっぱいは十分にかかります。36レースの場合、時間に直して多いときは、20時間ぐらいは費やしていると思います。
お宝は平場とローカルにあり
未勝利、500万下などの下級条件戦などでは、競争馬ごとの能力差が大きいことが上げられます。比較的私の論法は、これらの下級条件戦やローカル開催なども得意としています。オープンになると、それなりに研究され尽くしている場合が多いのですが、下級条件戦は実は、プロの予想家の記者でさえ、判断材料の乏しさに迷い悩んでいます。また、上級戦により多くの情報が舞い込み、消化不良を解消するだけでも四苦八苦、平場よりはるかに多くの時間を割かなければならない上、上級戦を当てなければ(儲けることとは根本的に異なる、記者は回収より的中を求められる。)記者として注目されません。しかし、ここに大きな落とし穴があります。予想家達は、単にメディアで流される評判や、取材で得たコメントだけを頼りに、安易な印を打つ場合が少なくありません。また、下級戦で人気を更に煽るファクターは、(降級馬等は除いて)前走着順が上げられます。下級戦で人気になるのは、ほとんど前走で2,3着馬です。着順のみをよりどころとして人気になってしまうケースが実に多く見受けられます。しかも、前走のレース内容まで突っ込んで研究検討されていません。たまたま相手関係や展開に恵まれ、凡タイムで2着した馬の1番人気が撃沈し、高いメンバーランクの組み合わせで、好タイムの上、厳しい展開で着順を落とした馬の5番人気のほうが圧倒的勝利を収めるなんて、しょっちゅうあるケースです。また、未勝利戦などキャリアの浅い馬同士が激突するレースでも、お宝は山積しています。よく、指数系理論では、このようなキャリアが1,2戦の馬の能力を正確に把握できずに撃沈する場合が少なくありません。まだ、脚質や距離適正、コース適正、トラック適正が定まっていないうちに、更には出来上がっていないうちに出走してくる馬が多く存在し、その伸び代が測りきれず、次走が読みきれないからです。そこを逆手にとって、芝からダート、距離延長や短縮、右回りから左回り、直線長いコースからローカルなどの短いコース、坂路の有無等の条件変更または、ブリンカーやチークやバシュファイヤーやハミ等の馬装具の着脱、騎手の乗り代わり、脚質転換、出来の良し悪し、レース馴れ、馬体重の増減等でガラリ一変するケースも相当目立ちますので、不人気馬の変更事項には注意が必要です。逆に、今まで好走していた条件から変更してきた馬が人気している場合は、疑って掛かるのも手です。好走するか凡走するか何ともいえない条件下での過剰人気は、むしろ軽視したほうが得な場合も少なくありません。もっとも、厩舎サイドも、全く訳も解らず条件変更してくるとは思えませんが、若駒のときはちょっとした気遣いで大きく変わる可能性を秘めています。それらの集合体でのレースでは、1番人気は嫌ってみた方がお得です。結果として、外れることもありますが(レースの3分の1は1番人気が勝利します。)長い目で見れば、人気過剰馬を切り飛ばし、もしくは買っても押さえまでか2,3着付けにした方が、良い結果が生まれるでしょう。
条件戦の諸事情を考察
経済学的観点から、競馬にも当てはまる事情は沢山あります。多くの事柄に、上限があるのと同様、馬の能力にも限界があります。500万なら勝てても、1000万に昇級すると掲示板の確保すら困難などという馬は、なるべく現級に留まって、入着賞金を長く稼いで欲しい、という馬主経済学があります。このような場合は、勝つことにさほどこだわりが無い、頭打ちの馬は500万、1000万には数多くいます。常にそこそこ人気していて、掲示板を確保するのだが勝ちきれない馬には、このようなタイプも含まれます。そろそろ順番ということをよく聞きますが、本当に次は順番なのか、また何かに負けてしまうのかは、よく吟味する必要があります。同じ3着馬でもハナクビ差の3着と、5,6馬身離された3着では、全く意味合いが異なります。さらに条件戦は、その勢力の安定馬、勝ち上がってきた馬、降級馬、地方馬、3歳4歳が入り混じったレースなど、比較検討が難しいが、配当妙味に富んだレースが多々あります。そのような中でも、過剰人気馬も、実力はあるのに何故か人気の盲点になっている馬が必ず存在します。その割にはあまり研究されていない、よって、そのような下級戦や500万が多く組まれているローカル戦は、穴馬券の宝庫となります。
ところが、未勝利戦では事情が全く異なります。3歳未勝利は、9月の開催で終了します。それまでに勝てなかった馬は、500万条件に格上挑戦するか、障害戦に回るか、賞金の低い地方に行くか、最悪は引退するのが通例です。とにかく1勝はしなくてはなりません。未勝利戦期限の近いスーパー未勝利前の夏開催などは、ほとんどフルゲートになる上、初ダートとかの条件変更でも、出来がイマイチでも連闘でも、とにかく出走して勝ちに行く、という姿勢で臨みます。従って、500万1000万クラスの、着拾いが基本的にはありません。馬券検討するうえでも、同じような午前中もしくはローカル競馬でも、クラスによって経済学的事情が違うことを念頭に入れて検討する必要があります。
後のGI馬と未勝利馬が同時に走るのは、新馬だけです。本来なら、このようなレースにこそ穴馬券が隠れていると思われますが、スピード指数は馬の走力から次走の着順を推定すると言う論法ですから、一度も走ったことの無い新馬戦では、指数の算定は困難です。やはり、新馬戦や出来上がった初出走馬が多く含まれる未勝利戦では、残念ながらあまり良積を残していません。ここ2年の新馬戦の成績でも、新馬戦の最高配当はたったの30万馬券1枚、10万馬券は一桁しか当たっていません。また、勝負レースも2レースのみでしたので、あまり推奨には値しないかもしれません。
ついにみつけた必勝法
そこで生まれたのが、スピード指数と単勝期待値理論です。詳しくは別記しますが、この理論はその当時はまだまだ未完のもので、データーを蓄積し進化している真最中でした。しかし、本命馬同士の組み合わせを買わなくなり、不人気馬から徹底して穴狙いをすることによって、また理論の精度と出走各馬のデーターが増大するに伴って、馬券収支も万馬券的中回数も、日を追って上昇傾向になりました。更にはVTRを繰り返し見ることにより、また各々のレースの感想戦を取り入れることによって、アナログ的な手直しも加わり、無敵の理論を確立するに至りました。次回狙いの馬が意外と人気せず、その馬が頭を獲って高配当を齎してくれた時などは、本当に気持ち良いものです。段々と理論に磨きがかかり、ほとんど毎週のように高配当を獲れるようになり、回収率も数年前についに100%を超えました。2009年は万馬券が886回、10万馬券が60回、最高98万馬券が当たりました。1日最高払い戻しは567万オーバー(500万台2回、400万台3回、300万台9回)、1レース最高払い戻しは400万オーバーを記録しました。万馬券が当たらなかった開催日は、2008年9月以降は1日だけ。週平均17本の万馬券、1~2本の10万超馬券が当たります。
そしてなんとか馬券だけで、慎ましく生活できるようになりました。
そう、私は地獄から這い上がってきたのです。
美浦ドリームを開設してから13年で、ダービー史上最高配当を含む19本の100万馬券を獲得するに至りました。
単勝期待理論
私は自ら単勝期待値理論なるものを導き出し、それを愛用しています。ごく簡単にたとえるならば、あるレースを10回同じ馬同士が走ったとします。そこで、1着を5回以上獲る確率が高い馬の単勝倍率が2.0倍を超えていたらそれは買い、2.0倍を切っていたら消しとする理論です。同じ考え方で、1着を4回以上獲れそうな馬は2.5倍を目安に、1着を3回以上獲れそうな馬は3.3倍、2回獲れそうな馬は5.0倍、1回でも1着を取れそうな馬は10.0倍を購入の目安とすると考えます。10回走って1回も3着以内を獲れなさそうな馬はさすがに消し、とする方法です。
となると、よっぽど能力が抜けていなければ、単勝1倍台の馬は買いにはなりません。払い戻しよりはるかにリスクのほうが大きくなります。そのような馬の出走してくるレースは、思い切って単勝1倍台の人気馬が飛ぶことに賭けるか、でなければ「ケン」に徹した方がお得と思います。つまり、ブエナビスタやウオッカ、更にはディープインパクトの単勝は買ってはいけない馬券ということになります。ましてや、新馬や下級戦での単勝1倍台は、あっさり勝たれても何の不思議もありませんが、回収率を考えるとまずは消し、どうしても買いたいときは相手程度に抑えるまでにしておくべきと思います。そういう考え方で馬券購入を検討しますと、自然と軸馬は低くて3~4倍台、高くて10~100倍台以上のオッズになります。相手もそれなりです。人気過剰馬は自然淘汰されます。このような考え方を基本に馬券購入を検討していました。
最初の頃は、確固たる軸馬理論があるわけではなく、所詮買い目の考え方、工夫のひとつで、理論上このようにしたほうが儲かる確率が高いはずですよ、と言っているだけですので、必ずしも的中に直結しているわけではありませんでした。何が何回1着に来るかを評価し、その確率を求めるのは苦労しました。今ではスピード指数とタイム理論、VTRを繰り返し見ることによる補正と感想戦を毎週行っているので、その制度は日増しに上がってきています。
馬券生活に馳せる夢
この頃から本気で、馬券生活を夢見るようになりました。私は家族を養わなければなりません。以前は会社のオーナーだったのに、今は競馬意外なにもしていませんので、馬券以外の収入は皆無です。体調も完全に回復していない状態で、今更どこかの会社で兵隊としては働けません。回収率が100%を超え、毎日高配当が当たるようになってから、これで生活できるかもしれないと、真剣に考えるようになりました。
夢見る馬券生活、競馬の好きな方なら誰でも一度は夢に描いたことはあることでしょう。好きな競馬で生計を立て、何も苦労して仕事などせずに、馬と遊んで暮らせたらこんなに楽なことは無いだろうと。しかし、現実的に可能なことなのでしょうか?馬券生活って楽なのでしょうか?あくまで競馬は趣味の範囲内で、お小遣いの範囲内で、家計に負担をかけない範囲内で行うのが本来の姿?と、頭では解っているのですが、夢を現実に変えてみたい、と思うことは罪ではないと考えます。ちなみに、私は競馬を遊びだとか趣味だとかというスタンスでは全く構えておりません。1戦毎が真剣勝負のビジネスととらえています。よって、所謂「楽しむ」というレベルでは到底ありません。発走直前は胃が痛み、日曜日の最終レースが終わった後は、精も根も尽き果て、へとへとになってしまいます。
ちょっと計算してみます。たとえば、サラリーマンの平均年収は、450万前後とか言われています。家族を養うなら、まあそれくらいは必要でしょう。競馬でとりあえず、500万位稼げれば理想でしょうか。毎年平均して500万のプラスがコンスタントに稼げれば馬券生活は成立します。
回収率が少なくとも120%を確保することを目標とします。とすると、年間約2500万程度投資して、500万のプラス、多少誤差があっても、サラリーマンの年収450万以上は確保できる計算が成立します。
但し、これにはいくつかの問題があります。言うまでも無く問題とは、回収率が120%を確保出来るかどうかということです。JRAの還元率はおよそ75%です。本来、競馬を長くやっていると、どんなに上手な予想と賭け方をしていても、最終的にはこの75%に収束していく傾向にあることは否めません。よって、回収率100%を維持するだけでも並大抵のことではありません。ましてや、コンスタントに、毎年のように120%を維持することが可能なのでしょうか?もう1つの問題点は、ギャンブル全般に言えることですが、当たり前ですけど、経済的リスクを伴うということです。2500万の投資の回収率が75%だった場合、1875万しか戻ってきません。差し引き625万のマイナスです。サラリーマンの平均年収を上回るマイナスです。夢見る馬券生活どころではなく、経済自体が崩壊してしまう危険性があります。投資にはそれなりの資金も必要ですし、リスクも伴うことを承知の上で行う覚悟が必要と考えます。
従って、馬券生活が成就した今でも、それはあくまで危険と隣り合わせの、毎週ハラハラドキドキの連続です。決して楽して儲けるなどという生易しいものではなく、乾坤一擲の勝負の世界に生きる馬券師の鉄火場人生なのです。普通の仕事で経済的基盤を確立しておいてから云々ではなく、むしろ自分には競馬しかないという背水の陣で、チャレンジしています。幸い今まで馬券生活は無事成り立ち、貯金も若干は出来るようになりました。
馬券生活その2
1週間のサイクルは、考えてみると木曜日の夕方からスタート。出馬表が出ると、前回までチェックしておいた管理表で、1頭ずつ今回のランクを確認します。必ずしもチェック表通りのランクになるわけでありません。条件代わり、距離延長や短縮、コース代わり、開幕週や最終週の馬場状態、降級や格上挑戦、メンバー構成、按上強化や減量騎手起用、斤量やハンデ、休養明けの状況、天候や馬場状態、その他諸々の要因が複雑に絡み合い、スピード指数に反映させて、今回出せる本来の実力を勘案してランクを決めます。土日72レースで多い時は約1000頭の出馬があります。全ての馬をチェックすると、1レース平均10分として、72レースで720分、12時間かかります。
予習は十分してありますので、1レースに費やす予想時間はそんなにかかりません。しかし、それでも予習の段階では見えなかった部分、枠順や情報諸々を掛け合わせ、見送りレースと一般レースと増額レースと勝負レースを見極め、適正な資金配分と予算を検討しますと、最終的な自分の買い目を決定するまでは、やはりそれなりに時間を要してしまいます。1レースにつき、概ね15分程度でなんとかしますが、それでも36レースあるとやはり10時間近くかかってしまいます。夕食や休憩の時間も挟み、納得するまで検討すると、大体就寝は深夜ごろになってしまいます。
数時間ほど仮眠を取って、8時前には起床し、さっさと洗顔と朝食を済まします。天候、馬場状態、出走取り消しや乗り代わりなどの変更情報を確認し、昨夜のおさらいをざっとしながら、テラスでコーヒーを一杯とタバコを一服。戦闘中はタバコも吸えません。
9時前後に第1レースの馬体重が発表され、いよいよ戦闘開始です。基本的に買う買わないは別として、なるべく全レースを予想してライブで見ます。終了は16時半ごろ、そしてすぐに日曜日分の検討に入ります。日曜日の最終レースが終わる頃にはクタクタです。でもそれでお終いではありません。その日から火曜日までは、感想戦と復習をたっぷり行います。たまにですが、水曜日には南関東に出張します。
考えてみると、ざっくりとですが、木~金にかけての予習に12時間、土日分の予想に20時間、実際の戦闘時間は土日で16時間、復習に20時間、その他数時間として、1週間に70時間前後、競馬に携わっていることになります。2場開催の時はまだ楽ですが、よく見ると結構過酷なタイムスケジュールに見えます。ここまで来ると、趣味なんて言う次元ではなく、完全にビジネスと労働になってしまいました。経営者時代よりはマシですので、あまりキツイとは感じません。
そのような、文字通り競馬付けのライフスタイルを数年間重ねた上での今日があります。ちりも積もれば山となる。コツコツ苦労して蓄積した私の経験と知識と技術、そして頭脳には、はっきりとした価値があると思います。全国津々浦々探しても、これだけ競馬に没頭している人間は少ないと思います。
ついに禁断の扉が開かれた。
やっと苦しみ抜いて確立した必勝法は誰にも教えない。と思ってしばらくの間この理論を使って荒稼ぎし、夢の10万馬券を普通に当てられるようになりました。せっかく導き出した必勝法を公開するなんて馬鹿なことをして。と言われる方は多いでしょう。でも、多くの人に私の論法を知っていただくことによって、今までの競馬の価値観が一変し、今まで経験したことの無いほど数多くの万馬券の的中に心躍ることになるはずです。それが40代で社会をドロップアウトした人間の、唯一出来る社会貢献であり、かつまた、私の新たな使命だと確信しています。
競馬には千差万別の予想方法があり、全ての人が私の論法に賛同して頂けるとは限りません。しかし、私の理論に接することによって、どのような競馬ファンでも、いつしか今後の馬券作戦に役立つ考え方を学べることと考えます。
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